| もう一つのイスラエルへの国境越えは、ヨルダンのアンマンから陸路入るルートです。アンマンからずっと谷に下り続けてヨルダン川にかかる橋が国境です。ヨルダンで入手した地図では、「キング・フセイン橋」となっていましたが、イスラエルの地図では、「アレンビー橋」と記されていました。 チャーターバスは、まず、国境の手前で止められ、まずは軍人がやってきて、パスポートチェック。次に全員下車、荷物を全部下ろさせられました。そして、荷物を全部開梱させられました。一つ一つ厳重にチェックです。
8月。外気温は40度Cを越えています。じりじりとした陽射しです。日影には、パレスチナ人が順番待ちらしく、だらっと群れています。どういうわけか、巨大な革製のカバンを売る商人が、カバンをずらりと並べています。何でこんなところでカバン屋なのか不思議に思いましたが、その理由がすぐに分かりました。国境越えをしようとする人たちのくたびれた古いカバンは、検査のため何度も開けられると、鍵や蝶つがいが壊れて二度としまらなくなってしまうのです。散乱した荷物を一まとめにするには、新しいカバンが必要になります。
ヨルダンを出国するのに2度チェック。イスラエルに入るのに2度チェック。国境のヨルダン川はそこではほんの数メートルの巾しかなく、木製の橋も短いものでした。しかし、橋の手前にはヨルダン軍が、向こう側にはイスラエル軍が機関銃を構えて警備しています。 ヨルダン川はやがて死海に至りますが、ここは海抜−400mで、地球上もっとも低いところになります。 川を渡って、イスラエルの入国審査の場所でチャーターバスはわれわれを降ろすと、アンマンに帰っていきました。
イスラエル入国の時には、スタンプを押さないで下さい、と頼みます。すると別の用紙をくれます。パスポートにイスラエルのスタンプを押されると、もうアラブの国には入れなくなるからです。 カメラは天井に向けてシャッターを押すように言われます。イスラエルは国民皆兵で、大学教授といえども年に定められた日数は軍務に就かなければならないとのことでした。若い人や年配者が国境警備に就いていました。若い女性の検査官に、「天井に向けてシャッターを押して下さい」と言われたので、悪ふざけで、彼女に向けてシャッターを切ろうとしたら、彼女はカウンターの下にさっと隠れました。緊迫したこういう場面での悪ふざけはしてはいけないことだとその時悟りました。
|