| 1962年、J.F.ケネディ大統領とメキシコのロペス大統領が会見したときのことである。
2人が同じ車に乗っていた。ケネディ大統領は、ロペス大統領がすばらしい腕時計をしているのに目を止めて、「美しい時計をおもちですね」とほめた。メキシコの大統領は、すぐに腕から時計を外して、「あなたにあげます」と言った。ケネディは困って、「受け取れない」と断わった。
しかし、メキシコの大統領は、「メキシコでは、誰かが何かを気に入れば、それを与えられるべきだと考える」と説明した。所有権は、私有という立場よりも人間の感情、欲求の次元で考えられているのだ。ケネディは強い感銘をうけ、最大のお礼とともに時計をうけとった。
しばらくして、ロペス大統領はアメリカの大統領に向かって言った、「あなたは、なんと美人の奥様をお持ちですな」。これを聞いてケネディはあわてて、「この時計は返します」と言った。
その時以来、米国とメキシコの関係がぎくしゃくしたそうだ。
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