| 天文学者になりたい、なんて大げさでした。
ただ星が好きで、学校の図書庫にあった天文の写真図鑑が大好きでよく読んでいました。星座の物語とか、宇宙の成り立ちの話とか、人間の宇宙観の歴史的な変遷とか。
その当時読んだ宇宙観と今言われている宇宙観とは全然違うんですね。びっくりするくらい違う。
自分で土星の輪が見たくて、お年玉を貯めて天体望遠鏡を買おうとした。当時、3,000円で組み立て式のものが売っていました。それで、貯金通帳から下ろしてほしい、と親に頼んだんですが、父がダメだという。自分の金のはずなのになぜダメなのか。何年もかけて貯めたものだったから、一度に使うものではない、ということだったと思うのですが。父親の権威は絶対でしたから、あきらめました。
それで、レンズだけを注文しました。そして、文房具屋から硬い紙(何て言ったかなあ、黄色くてケバケバしているもの)で筒を作って望遠鏡を作りました。しかし、星を見ても焦点が合わなかった。月の明るさはそのまま入っては来たものの、これも月の山や海が見えたわけではなく、ただ光が入ってきて、丸い筒の内側のケバケバだけが月の光に浮き上がっていた。それで何となく月の表面を見たような気になって自分を慰めていました。天体望遠鏡作りの挫折がそのまま天文学を究める上での挫折になったという情けない話。
それでも、中学時代、信者さんが東急レクリェーションに勤務していて、毎月五島プラネタリウムのチケットを下さるので、よく見に行きました。 理科の授業で天文の項目があったので大喜びをしたんだけど、授業はなかなかそこまで進まない。3学期になって、やっとその項目まで進んだと思ったら、たった1時間でさっと過ぎ去ってしまった。しかも、先生は私より天文のこと、詳しくなかった。
高校では天文は「地学」という学科で、これは天体よりも地球の組成の話だったような気がするけれど、私の興味とはおよそ違う内容で、その時点で天文学は私から遠ざかっていってしまったのです。
初めて土星の輪を見たのは、じつは10年くらい前のことで、金光町の遙照山のホテルにあった小さな天文台というか、そこに備え付けられ、300円で解説付きで見せてくれた望遠鏡で見たときのことです。
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